2008年6月28日土曜日

vol.4 うめはらなかせの“選曲眼“(中)


第4回「うめはらなかせの選曲の秘密」がまだ続きます。


 初めてのライブでは、けっこう曲選びで悩みましたね。

 やっぱり、だれもが知ってる曲があったほうがいいということで、「白い色は恋人の色」を入れたんですね。

 知ってる曲が出てくるとうれしなるて言わはるお客さんもいはりますしね。

う その意味で、童謡、唱歌、CMソングがいいんですね。

 みんな覚えたはるし、きれいな曲が多いですし。CMソングは「サントリーオールドの歌」「かねてっちゃんの歌」「パルナスの歌」、いろいろやってます。

 「1234」は、iPodのCMを見てた嫁はんが、「これやってみたら?」と勧めてくれた曲です。うめはらなかせにとって、初の21世紀に出た歌への挑戦ということになります。99%は20世紀の歌ですもん。

 若い人からは「知ってる知ってる」と言うてもらえますね。

 ということで、自分らのやりたい曲というのと、お客さんが聴きたそうな曲。その両方のポイントから曲選びをしてますね。

 私らもお客さんも楽しめるように、てね。

 ぼくら、そろってええトシですし、過去にバンド経験もあるので、昔歌ってた曲をいま取り上げてると思われるかもしれませんけど、実はこのトシになって初めてやる曲、初めて聴いた曲が多いんですよね。

 そうです。私はPP&Mしか歌っていませんでしたからねえ。

 ぼくが大学生のころやってたバンドでは、リーダーがつくったオリジナル曲を中心にいろんなジャンルの曲をやってました。そういう意味では、いまのうめはらなかせに通じる部分はあります。ただ、ぼくのつくった曲はやってませんでした。

 やってもらえませんでした、でしょ。

 ま、そうかな。自分からはやりたいって、あんまり言わない人間なんです。だから、なかせさんがやりたいて言い出さなかったら、自分のつくった曲はいまもやってなかったでしょうねえ。

 ほんま消極的ですもんね。

 奥ゆかしいんです。

 バシッ!

 勝手に言うとき。それに、最初はレパートリーが増えませんでした。歌詞を覚えんとあかん、譜面見て歌うなんてお客さんに失礼やと頑張りましたね。

 ほんまや、なかせさん頑固でしたよ。ぼくが歌詞を見て歌いたい言うたら、そら邪道や、みたいに、ものすごい剣幕で怒られたもんです。

 そんなつよう言うてませんやん。ちょっとアドバイスしただけ。

 初ライブでは歌詞を見んと歌いましたけど、ものすご緊張しました。

 ところが、歌詞を覚えられるまで待ってたら次の曲にかかれんようになってしもたんですよね。

 実際、次のライブで「She loves you」の歌詞が出てこんと、ステージでかたまってしもたことがありました。

 あったあった。

 それから、歌詞が覚えられへんせいで歌えへんくらいやったら、歌詞を見て歌えるほうがマシちゃうかと開き直るようになったんです。

 歌詞を見てもええんやったら、いっぱい歌えるなあと妙に納得して、それからは歌詞を見ることにしました。

 それでも、ある程度覚えないと歌えませんけどねえ。

 うめはらさんは、ほんまに記憶力がええですね。すぐ覚えはる。集中力があるんでしょうかね。せやけど、忘れるのも早い。

 最近はコードも忘れます。昔はコードは無意識にとれたんですけどねえ。

 それで次の歌を覚えたら前に覚えた歌は忘れはる。これは、見事な能力です。普段の会話でもそうですけど。

 そうでしたかいなあ~~

 言うたしりから、忘れはる。いつも、そんなん言いました? そんなこと書きました?

はははは、たいそうに言うてからに。とにかく歌詞を見て歌うことにしたおかげでレパートリーは飛躍的に広がっていきました。

 とにかく気になる曲はやってみよかと。

 で、MISIAの曲はなかせさんが持ってきはりましたしね。これは最初できるんかいなと思いました。なかせさんはどう見てもMISIAというよりめしやのおば……

 バシッ!

 い、痛っ! 定番のシバキ、ありがとさんです

 しばかれたいんでしょ。

 これ、けっこう読者が心待ちにしてはるんですわ。

 「名前のない空を見上げて」は8分の6拍子がわかりやすい曲やというので送ったんですけど、歌うことになりましたねえ。

 いまだに8分の6拍子と3拍子の違いがわかりませんけど。

 かなんなあ。まあ、私もMISIAをやるやなんて、あつかましいにもほどがあると思てます。

 ほんまに、ほどがあると思いますよ。

バシッ!

 バシッ!

バシッ!

 まだ思うかァ?

 い、いいえ、思いません、ちっとも、まったく、けっして。

つづく

2008年6月23日月曜日

vol.4 うめはらなかせの“選曲眼“(前)


「うめはらなかせは選曲が面白いですねえ」とよく言っていただけます。高峰秀子からクイーンまで、戦前の唱歌から21世紀のCMソングまで、どういう脈絡でレパートリーができあがっていくのか? 第4回はうめはらなかせの選曲の秘密です。


 選曲はどなたからもけっこうほめてもらえますね。

 ほかに、ほめるとこないしね。

 ガクッ! それ言うたらしまいですやん。

 皆、気の毒がって、なんなとほめなあかんという優しい気遣いです。

 まあね。ぼくもなかせさんも、自分が主体でやるというバンドは初経験なんですよね。そやから自分でレパートリーを決めていくという経験も初めてで。

 歌いたい歌が歌える。これがこんな楽しいことやと初めて知りました。

 基本的にはお互いにやりたい曲をメールで送りあって、相方が歌いたいといったら、それでOK。どんな曲を選んでもいいんです。この自由さと来たら。

 こんな曲やろかて言うたら、変なやつと思われへんやろかとびくびくせんでもええしねえ。「お富さんどうです?」てたずねてきはったときに、なんでもありでええねんなあと思いました。

う へ~、そうでしたか。いってみれば、ツタヤに入って、どのジャンルからでも観たいビデオを選んでええと言われたみたいなもんです。おっ、「人妻」ものもありやなあ、「女教師」シリーズもええなあ、「制服」も「緊縛」もあったがな……みたいな。

 バシッ!

 一発では手ぬるい。

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

 イテテテテ。5連発や~~!

 ちょっと聞いとこ、「緊縛」これはどう読むんです?

 きんばくです~ぅ。

 そういう無駄知識だけはあるんやから、もう。

 まあ、それくらい広いジャンルから選べるってことのたとえですやん。

 ちょっとも広ないわ。みんなおんなじカテゴリーやん。ハリソン・フォードあり、佐藤浩市あり、ヨン様あり、ぐらいのこと言えんかいな。あんまり変わらんか。

 なかせさん、意外に面食いなんやなあ。歌のほうでは、フォークとビートルズを中心に、歌謡曲、民謡、童謡……と好き嫌いは少ないですね。

 はい。なんでも好きです。二人ともガラに似合わず、かいらしい曲がすきですねえ。

 かいらしい曲! へ~、そういう表現があったんですね。ぼくは歌謡曲よりロックを多めに提案してるかなあ。

 まあ、でも、ほとんどうめはらさんがリードしてはりますけどね。たくさんの音源を持ってはりますもん。

 なかせさんに比べたらねえ。

バシッ!

 なんか剣のある言い方や。

 また、すねてからに。とにかく最初のころに練習したのが、オリジナルの「おたすけ」、ビートルズの「I will」、ベッツィ&クリスの「僕の中の君」、サイモン&ガーファンクルの「水曜日の朝午前3時」でしたね。

 「おたすけ」のメロディの動きがいままで聴いたことないもんやったんで、自分から歌いたいと言い出したわりには、てこずりました。

 そうでしたね。わざわざ音符に起こして覚えたはりましたね。それがぼくには新鮮で。ぼくら音譜読めませんし、ドレミで言われてもわかりませんでしたけど。

 「I will」、これはいままで言うてませんでしたけど、高校のときにね、男の子にこの歌詞の入ったお手紙もらったことがあったんです。

 や、やらし! だんなさんに言うたろ。

バシッ!

 なんでやねん! こんな素敵な歌詞のビートルズがありますよ、ていうだけのお手紙でしたけど。

 下心見え見えですがな。なかせさん、モテてはったんや、いまとちごて。

バシッ!

バシッ!

 ほんまにチャチャばっかり入れてからに。とにかく、それ以来、私はずーっと歌いたかったんです。それで、うめはらさんが「おたすけ」「I will」とメールで送ってきはったときは、このチャンスを逃したらあかん、いま自分から働きかけなあかん、と。大げさやけど、こんな機会は二度と私には来いひんやろ、と思いました。

 それで「一緒に歌いませんか」てメールしてきはったんですね。

 そしたら返信で「ほんまにうれしいお誘いで、舞い上がってしまいそうです」てメールを送ってきはったんです。

 そやったですか!

バシッ!

 もう忘れたんかい!

 へへへ。

 「もしまた音楽ができるならこんなこともあんなこともしたい」てお返事くれはりましたよ。このときの“音楽ができる”という言い方に、私は感心したのを覚えてます。“歌いたい”やなくて“音楽ができる”て、へ~~、そういう考え方しはるんやて。

 へ~~~~~!! そら初耳でした。

バシッ!

 前に言いました。

 さ、さいですか。ま、ぼくの場合、歌いたいというより、ギターで伴奏がしたい、ハモりたいというのが強いんで、それを一言で“音楽する”と表現してるんでしょうねえ。

 おまけに、この「I will」、アリソン・クラウスの素敵なアレンジでした。実はこのCD、ひとからもろて持ってたのに、聴いてなかったんです。

 そこがアホのアホたるゆえんですわなあ。

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

 また5連発、いっとこ。

 目ぇ~まわってきた。


つづく

2008年6月3日火曜日

vol.3 うめはらなかせはなぜふたり?


うめはらなかせは、ボーカル2+ギター1の最小編成バンドです。なんでこうなったのか? 第3回はバンドのスタイルについてです。


 今回はスタイルの話です。

 バシッ!

 イテテテテ。体重の話やなくて、バンドの演奏スタイルのことですやんか。

 そやったん。

 なかせさんに「いっしょに歌いましょ」と誘われて、最初に練習しましたね、あのバレエレッスン場で。

 だだっ広いとこね。うめはらさん暖房と冷房のスイッチを間違えはって寒かったです。あのときに鈍くさい人やっちゅうことに気づくべきやった。

 はははは、完全に忘れてた。冬でしたもんね。あんとき、なかせさんはオベーションのガットギターを持ってきはって、自分でも弾かはったでしょ?

 ポロロンとね。

 それで、「へ~、自分で伴奏して歌わはるんや」と思うたんですけどね。ギター2台でやるつもりはなかったんですか?

 そんなん、ぜんぜん思ってしません。ヘタクソですもん。

 エミルー・ハリスの曲、それなりに雰囲気出てましたよ。

 いや、ほんま?

 ほんまほんま。そういえば、最初はベッツィ&クリスとサイモン&ガーファンクルの曲が中心で、ご本家はどっちもギター1本で、ボーカル2つです。

 ギター1本あったら歌えると思うてました。

 ギターは1本でも、スチールとガットを使い分けるんですけどね。スチール・ガット、なんちゃって。

 意味わかりませんーーー。けど、あんまり見かけませんね、この編成。

 最初から自分が歌姫になるつもりやったんでしょう。

 バシッ!

 い、痛っ! ぶた姫て言うてませんやんか

 ほんまに、ようそんなこづら憎いことばっかり思いつきますね。

 へへへ。それと、うめはらなかせはなんでふたりかっちゅう話ですけど。PP&Mの掲示板で知り合うたんやから、あとからだれか入ってもろてもよかったんですけどね。

 こんな変わりもんふたりのとこにだれが寄ってくれはります?

 しやろか。まあ、ふたりだけっちゅうのはフットワークが軽いですよね。練習の予定を決めることから、どの曲をやるかまで、すぐ相談できて、すぐ決まる。

 フットワークは軽いけど、からだは重い。と自分で言うてしまいました。

 ははは、先に言われてしもた。ギター1本やと楽器の練習時間もいりませんしね。その代わり、音がしょぼいがな。

 そんなことないと私は思っています。へたなギターが入るよりずっとマシですやんか。

 まあ、チューニングひとつとっても2台やと時間がかかります。それでもPP&Mみたいにギター2台でやるときれいですけどね。

 いろんなとこで上手な人に出会えるし、そういうときにちょこっと合わせはったらよろしいやん。

 ときには3声でハモりたい歌もあるし、演奏かて音の厚みもほしなることもあるけど、このふたりだけの気楽さにはかないませんな。

 バシッ!

 ぶ厚いカラして役に立たん、て言いたんでしょ!

 イテテテテ。言うてませんって。言うてないだけで。

 にくたらしいわ。ほんまに。

 被害妄想やがな、ほんま。まあ、しかし、メンバーがふたりだけで、楽器のアンサンブルもなしっちゅうことで、やりたい曲がすぐできる。そこが利点です。

 でも、他のバンドがしてるのにやってないことがありますやんか。

 なんです?

 忘年会やライブの打ち上げ飲み会。私らふたり寄ったら、練習しよかになりますもん。

 ふ、ふたりだけで飲み会! 考えたことない。

 バシッ!

 イテッ!

 考えたことないてーぇ?

 なかせさんの顔見て飲んでもおいしないし。

 バシッ!

 バシッ!

 おたがい様ですぅ。

う 2発もどつかれたあ。そういえば結成1周年のお祝いもしてなかったなあ。

 とにかく練習が楽しいのが何よりですもんね。

 へえ、なかせさんの持ってきてくれはるおやつと熱い紅茶も、ありがたくお呼ばれしてまっせ。

 感謝して食べよし! 

 食べてますがな。

 でも、始めは練習だけでええと思うてましたもんねえ。ハモれるだけで楽しいし。

 ほんまでっせ。ぜーたく言うたらあきません。主婦とフリーライターやさかい平日の昼間に練習できるし。

 家も近くもなく、遠くもなく。

う それにぼくら、お互い自分の意見が遠慮のぅ言い合えるとこがええんですわ。

 強力なリーダーがいてませんしね。

う イコール・パートナーということです。体重はイコールちゃいますけど。

 バシッ!

 バシッ!

バシッ!

う 3発もどつかれたあ。

 当然の報いやわ。

 てことで、次はうめはらなかせの特色である選曲の妙について。

                                               つづく