2008年8月5日火曜日

vol.5 うめはらなかせの初ライブ


うめはらなかせは2007年5月12日、コープイン京都で初ライブを経験しました。それまでは人前で歌うなんて想定していませんでしたが、これをきっかけに「出演」することの楽しさを知って病みつきに(でもないか)。


 そもそも、どういう経緯でライブに出させてもらうことになったんですか? なかせさんのほうから、出たい出たいって言うてはったんですか?

 コープイン京都のライブを主宰してはるNさんとお知り合いやったんです。Nさんはご自分で「フォークルーツ」という男性ばかりのバンドで活動されていたので、PP&Mの曲を演奏されるときとか、ときどき声をかけていただいてマリーさん役で歌わせてもらってました。

う ぼくも一回聴きにいきました。「No other Name」を歌たはりましたね。

な それでNさんに「男の人と二人でバンドを組みました」てお話したら、そら出てくださいて言うてくれはってねえ。

 Nさん、ええ人やなあ。ものすご恩義を感じてるんですよ。歌える場をつくるという縁の下の力持ち的なことをずっと続けたはるでしょ?

 ほんま、ありがたいことです。ライブに出たい人はたくさんいてても、ライブの場をつくろうという人はなかなかいてはりません。

 ただねえ、Nさんにひとつだけ注文あるんです。「うめはらなかせはプロです!」て言うのだけやめてくれはったら、カンペキにええ人なんですけどねえ。

 あれ、言われるたんびに恥ずかしいですもん。

 身が細りますねえ。

バシッ!

 いやみかい!

 わかりました?

 とにかく私、そのときはライブに出たいというより、バンドを組んだことがうれしいて、Nさんには黙ってられへんだったんですよ。

 ほんま、しゃべりですもんねえ。

 私は練習してるだけでも楽しかったんですけど、発表する場があるっていうのは、張り合いになりますやんか。ありがたいことでした。自分たちでお客さんを呼ぶのでなく、お客さんが入っているところで歌わせてもらえるんですものね。

 そう、そのときは全然わからんかったんですけど、ぼくらみたいなアマチュアバンドがライブをしようと思うと、お客さん集めからせんならんのですね。知りませんでした。ぼくみたいに友だちのいてない人間にはきついですわ。

 その性格では友だちもできんわな。口が悪い悪い。

 みなさん、そないおっしゃいます。

 はじめのうちは、私がうめはらさんをあっちこっち連れまわしてるみたいなかたちでしたね。

 米つきバッタみたいに挨拶してまわりました。

 バシッ!

 たいそうなこと言うんやないの! まあそのうち、「うめはらなかせ」としてお会いした人には、うめはらさんが直接コンタクトを取ってくれはるようになって、やっぱり男の人が話を決めてくれはると早いなあと思いました。それだけで、なにか安心でした。主宰者の方の印象も良くってね。

 ぼく、そとづらはええみたいなんですーぅ。

 うめはらさんとはヤフー掲示板の「PP&Mはどこに行ったの?」のオフ会で2回会っただけで、面識はなかったのも同然でしたしね。ライブにも私が強引にひっぱりだしたんやないかという引け目みたいなもんも少なからずありました。

う たしかに自分ひとりではなんもやる気はなかったですね。人脈もないし、だいたい歌はうたいとない人間ですから。

 そやけど、ほんまにいややったら見ず知らずのおばさんと歌うなんてことしはらへんでしょう。うめはらさんが新しいかかわりを引き受けてくれはって、ほんとうにうれしかったんですよ。

 まあ、ぼくもうれしかったかな~。

 バシッ!

 メールで誘うたら「舞い上がってしまいそう」て、返信してきたん、だれや!

 そうでしたかいなー。

 それはともかく初ライブでなにをやるか。

 用意した曲は、「白い色は恋人の色」「おたすけ」「僕の中の君」I will」「She loves you」「近江の子守唄」でしたね。ビートルズならみんな知ったはるし、「白い色は恋人の色」も昭和のヒット曲です。僕の中の君」は同じくベッツィ&クリスの曲。これはヒットしてないけど、大好きな曲です。そして「おたすけ」はオリジナル。

 この「おたすけ」を聴いてくれはったコープイン京都の前の支配人さんが、すごく気に入ってくれはってね。そやからちゃんと録音してお渡ししたいと思てるんです。これはいまの私の当面の目標ですねん。

 ええ人でしたなあ。そやけど、社交辞令ちゃいますのん。

 バシッ!

 そういう盛り下がることは言うもんとちゃうの! それに支配人さんは、次の赴任先の大学のHPで「おたすけ」を鳴らしたげよかて真剣に言うてくれはったし。

 さいでしたか。

 ベッツィ&クリスはほかにもヒット曲がありましたけど、「僕の中の君」は知りませんでした。

 ぼくもCDを買って初めて知りました。フォークっぽい、いい曲なんですよねえ。サイモン&ガーファンクルの影響が感じられます。

 この曲、バンドを組む話とか出る前に、メールで送ってくれはったのを聴いて密かに練習してたんですよ。うめはらさんがPP&Mのオフ会へ初めてギターもってきはったとき、私が歌ったら「そんなんやったらちゃんとコードとって練習してきたら良かった」て言うてはりました。忘れてるやろなあ。

う はい。

 バシッ!

 想像通りかい! ほんまにせんない人やわ。

「近江の子守唄」は、高石友也とナターシャセブンのバージョン。35年くらい前のカセットに入ってたのをぼくが引っ張り出してきて、このハモはいけると。けっこう「うめはらなかせ」的でした。

 そうそう、私の声とうめはらさんのハモリとうまく合うキーなんでしょうね。淋しそうな曲にぴったりの枯れかけたおっさんとおばはんですし。

「昭和枯れすすき」みたいに聞こえますがな。そやけど、おっさんとおばはんで人生経験も豊富なわりには、初めてのことで、MCがほとんどなかったんちゃいます?

 まるで高校生の学園祭みたいに次の曲名だけいうて歌うみたいな感じでしたね。

 MCは歌より自信あったんですけどねえ。なんせ初めてなもんで。

 Nさんには「私たち初めてのライブやから前座として、最初のほうに出してください」てお願いしてたんですよ。

 それで6時10分スタートで、持ち時間は20分。それが10分ちょっとで、全曲あっと言う間に終わってしまいましたね。

 何曲が歌えるか時間も計らんと舞台に立ちました。そやから時間があまったんですね。

 そんなわけで急きょ、予定してなかった「近江の子守唄」を歌ったんでしたっけ?

 思い出すとなんか懐かしいなあ。初めて歌ううれしさと緊張とが入り混じってね。

 それにこのころは、歌詞は絶対覚えて出よということでやってましたもんね。いつもお風呂で歌て歌詞を暗記してました。

 それぐらい、気合いが入ってたっちゅうことでしょうね。

う 舞台衣装も悩みましたがな。

 うめはらさんの黄緑のオシャレなオープンシャツ、印象的でした。へえ、おっさんがこんな若いの着はるんやと思いました。

 さいですか。ぼくはなかせさんの服は覚えてませんし。

 バシッ!

 期待してしませんし。そのわりにキレイなお客さんと出演者はようおぼえてはりますね。「あの人、いくつぐらいなんでしょ?」とか。ほんまやらしいおっさんやわ、けったろ! 

バスッ!

バスッ!

バスッ!

う イテテテテ。大根足キックがキマった~~。

 それで8時半ごろ、ほかのバンドさんの到着が遅れたかなんかで、もう1曲と頼まれて、いったん引っ込んでたのにステージにあがりましたね。

う 何しようと思いながら決めずに舞台にあがりました。ほんで「a swallow song」しましたね、アカペラで楽ちんでした。

 この歌、これ一回きりでしたね。初ライブやから歌えたんかもしれへんなあ。狂ったらにっちもさっちもいかへんもん。

 しかし、初ライブ、めちゃめちゃあがりましたね。ぼくはステージであがったことがないのが自慢やったんですけど、まったくあきませんでした。

 私もあがり性です。前のバンドのメンバーからは「なかせさんからは緊張が伝わってくる」と言われたもんでした。うめはらさんも「なかせさんがあがるさかい、ぼくにも伝染するんです」言うて責めはりました。

 責めましたっけ? よう考えたら、大学時代とかバンドは3人以上でやってて、ぼくは大して役割を果たしてませんでした。リーダーが8~9割くらい頑張ってるから、ぼくがまちごうても大勢に影響はない。そやからあがらんかったんですね。ところが、いまは責任が半々です。

 ギター一本ですもん。伴奏は全部うめはらさんの肩にかかってますもんねえ。

 感謝せえよ。

 バシッ!

 なんで急にえらそうやねん!

 いつも本番前に階段の踊り場でやる練習ではうまいことハモるんですけどねえ。

 狭い階段室で、音がものすごく響くので、完璧にハモって聞こえます。もう舞台に立たんでもええかなあと満足してしまいます。

 初ライブから1年以上、コープインでは毎回新しい歌をお客さんに聴いてもらおうと張り切ってやってきましたねえ。

 あれから、ほんまにたくさんのライブに出演させてもらいました。こんな風にHPまでつくってやっていけるなんて、夢にも思ってませんでした。

 こんなに毎月どっかに出させてもらえるやなんて、できすぎですね。

 ライブに来てくださるお客さんはもちろんですけど、出演の機会を与えてくださった方々に感謝せなあかんなと思います。

 ほんまですわ。そやのに最近はレパートリーを増やすことと、ライブの数をこなすことに追われてしもて、ひどいときはステージの上で次やる曲を考えてましたもんね。

 もう少しライブを減らして、少しでも充実した音楽をお聴かせできるように練習せなあきませんね。

 やりかけの曲もたくさんありますもん。

 そやけど、ライブを減らすと出演の機会を失くすんやないかと言う不安が湧いてくるのもまた事実です。

 なかせさん出たがりですもんね。

 バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

 そういうお前はどやね~~~~~~~~ん!

 てことで、次はうめはらなかせのギターについて。

つづく