2008年6月23日月曜日

vol.4 うめはらなかせの“選曲眼“(前)


「うめはらなかせは選曲が面白いですねえ」とよく言っていただけます。高峰秀子からクイーンまで、戦前の唱歌から21世紀のCMソングまで、どういう脈絡でレパートリーができあがっていくのか? 第4回はうめはらなかせの選曲の秘密です。


 選曲はどなたからもけっこうほめてもらえますね。

 ほかに、ほめるとこないしね。

 ガクッ! それ言うたらしまいですやん。

 皆、気の毒がって、なんなとほめなあかんという優しい気遣いです。

 まあね。ぼくもなかせさんも、自分が主体でやるというバンドは初経験なんですよね。そやから自分でレパートリーを決めていくという経験も初めてで。

 歌いたい歌が歌える。これがこんな楽しいことやと初めて知りました。

 基本的にはお互いにやりたい曲をメールで送りあって、相方が歌いたいといったら、それでOK。どんな曲を選んでもいいんです。この自由さと来たら。

 こんな曲やろかて言うたら、変なやつと思われへんやろかとびくびくせんでもええしねえ。「お富さんどうです?」てたずねてきはったときに、なんでもありでええねんなあと思いました。

う へ~、そうでしたか。いってみれば、ツタヤに入って、どのジャンルからでも観たいビデオを選んでええと言われたみたいなもんです。おっ、「人妻」ものもありやなあ、「女教師」シリーズもええなあ、「制服」も「緊縛」もあったがな……みたいな。

 バシッ!

 一発では手ぬるい。

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

 イテテテテ。5連発や~~!

 ちょっと聞いとこ、「緊縛」これはどう読むんです?

 きんばくです~ぅ。

 そういう無駄知識だけはあるんやから、もう。

 まあ、それくらい広いジャンルから選べるってことのたとえですやん。

 ちょっとも広ないわ。みんなおんなじカテゴリーやん。ハリソン・フォードあり、佐藤浩市あり、ヨン様あり、ぐらいのこと言えんかいな。あんまり変わらんか。

 なかせさん、意外に面食いなんやなあ。歌のほうでは、フォークとビートルズを中心に、歌謡曲、民謡、童謡……と好き嫌いは少ないですね。

 はい。なんでも好きです。二人ともガラに似合わず、かいらしい曲がすきですねえ。

 かいらしい曲! へ~、そういう表現があったんですね。ぼくは歌謡曲よりロックを多めに提案してるかなあ。

 まあ、でも、ほとんどうめはらさんがリードしてはりますけどね。たくさんの音源を持ってはりますもん。

 なかせさんに比べたらねえ。

バシッ!

 なんか剣のある言い方や。

 また、すねてからに。とにかく最初のころに練習したのが、オリジナルの「おたすけ」、ビートルズの「I will」、ベッツィ&クリスの「僕の中の君」、サイモン&ガーファンクルの「水曜日の朝午前3時」でしたね。

 「おたすけ」のメロディの動きがいままで聴いたことないもんやったんで、自分から歌いたいと言い出したわりには、てこずりました。

 そうでしたね。わざわざ音符に起こして覚えたはりましたね。それがぼくには新鮮で。ぼくら音譜読めませんし、ドレミで言われてもわかりませんでしたけど。

 「I will」、これはいままで言うてませんでしたけど、高校のときにね、男の子にこの歌詞の入ったお手紙もらったことがあったんです。

 や、やらし! だんなさんに言うたろ。

バシッ!

 なんでやねん! こんな素敵な歌詞のビートルズがありますよ、ていうだけのお手紙でしたけど。

 下心見え見えですがな。なかせさん、モテてはったんや、いまとちごて。

バシッ!

バシッ!

 ほんまにチャチャばっかり入れてからに。とにかく、それ以来、私はずーっと歌いたかったんです。それで、うめはらさんが「おたすけ」「I will」とメールで送ってきはったときは、このチャンスを逃したらあかん、いま自分から働きかけなあかん、と。大げさやけど、こんな機会は二度と私には来いひんやろ、と思いました。

 それで「一緒に歌いませんか」てメールしてきはったんですね。

 そしたら返信で「ほんまにうれしいお誘いで、舞い上がってしまいそうです」てメールを送ってきはったんです。

 そやったですか!

バシッ!

 もう忘れたんかい!

 へへへ。

 「もしまた音楽ができるならこんなこともあんなこともしたい」てお返事くれはりましたよ。このときの“音楽ができる”という言い方に、私は感心したのを覚えてます。“歌いたい”やなくて“音楽ができる”て、へ~~、そういう考え方しはるんやて。

 へ~~~~~!! そら初耳でした。

バシッ!

 前に言いました。

 さ、さいですか。ま、ぼくの場合、歌いたいというより、ギターで伴奏がしたい、ハモりたいというのが強いんで、それを一言で“音楽する”と表現してるんでしょうねえ。

 おまけに、この「I will」、アリソン・クラウスの素敵なアレンジでした。実はこのCD、ひとからもろて持ってたのに、聴いてなかったんです。

 そこがアホのアホたるゆえんですわなあ。

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

バシッ!

 また5連発、いっとこ。

 目ぇ~まわってきた。


つづく